日本食品科学工学会誌
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マルチバンドイメージスキャナの開発と近赤外分光イメージングへの応用
メロンの糖度分布可視化
蔦 瑞樹一ノ瀬 修一小川 紋弘杉山 純一相良 泰行
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2004 年 51 巻 5 号 p. 247-253

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抄録

特定の波長で対象をスキャンすることが可能なマルチバンドイメージスキャナを開発した.また,その有効性を検証するため,メロンの糖度分布可視化に取り組んだ.
1) アンデスメロン及びクインシーメロンをサンプルとし,それぞれを半分に分割して,糖度と吸光度が逆相関関係にあると報告されている676nmでその果肉断面をスキャンした.
2) 得られたスキャン画像のγ値を補正し,サンプルの反射率と輝度値間の線形性を確保した.次に,各画素の輝度値を吸光度に変換した.
3) 半割サンプルから円柱状に果肉をくり抜き,検量線サンプルとした.検量線サンプルのスキャンと糖度測定を繰り返し行い,吸光度と糖度実測値のデータを得た.これに線形回帰分析を適用し,吸光度と糖度の検量線を得た.
4) 得られた検量線を半割サンプルのスキャン画像の各画素に適用し,糖度分布の可視化画像を構築した.
吸光度と糖度の検量線の精度は,従来の近赤外分光装置を用いた果実の糖度推定とほぼ等しかった.また,糖度分布の可視化画像において,照明ムラなど空間的な誤差要因の影響は小さく,実際の糖度分布が正確に再現されていると考えられた.さらに,CCDカメラによる可視化手法よりも細かい構造・成分分布解析が可能となった.以上より,マルチバンドイメージスキャナは安定・高精度・高精細という特徴を有し,近赤外分光イメージングによる成分分布可視化に有用であることが明らかとなった.今後は,簡易型分光顕微鏡として利用することや,様々な食品における成分分布可視化への応用が期待される.

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