日大医学雑誌
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原  著
脱分化脂肪細胞からの iPS 細胞 (induced pluripotent stem cell) の樹立
橋本 真植草 省太小野 賀功後藤 俊平細川 崇越永 従道松本 太郎
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キーワード: 脱分化脂肪細胞, iPS 細胞
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2020 年 79 巻 5 号 p. 275-286

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抄録

脱分化脂肪細胞 (DFAT: dedifferentiated fat cell) は,成熟脂肪細胞を天井培養することにより得られる間 葉系幹細胞に類似した多分化能を有する細胞である.本 研究はヒト DFAT に山中 4 因子を遺伝子導入することに より iPS 細胞の作製を試み,ヒト皮膚繊維芽細胞 (HDF) と誘導効率を比較検討した. センダイウイルスベクターを用い山中 4 因子を DFAT に遺伝子導入し,iPS 細胞コロニーを誘導した.コント ロールとして HDF とヒト新生児包皮由来繊維芽細胞 (BJ) の 2 種を使用し,同様に iPS 細胞の誘導を試みた.誘導 した iPS 細胞コロニーから胚様体を誘導後 in vitro 三胚 葉分化能を免疫組織学的に評価した.また誘導した iPS 細胞コロニーをアルカリフォスファターゼ (ALP) 染色し, 陽性コロニーの数を経時的に測定することで iPS 細胞の 誘導効率の比較検討を行った. DFAT 由来 iPS 細胞コロニーは,RT-PCR 法にて検討 した胚性幹細胞マーカー25 因子すべての発現が認めら れた.免疫染色では Nanog,Oct3/4,SSEA-3,TRA1-60 強陽性を示した.誘導した胚様体組織中には,内,中, 外胚葉マーカー陽性を示す領域をそれぞれ認め,三胚葉 系列への多分化能が確認された.iPS 細胞コロニーの誘 導効率は BJ,HDF に比べ,DFAT で有意に高かった. DFAT は iPS 細胞の標準的な供給源である皮膚繊維芽 細胞に比べ,iPS 細胞コロニーの誘導効率が高いことが 明らかになった.

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