2009 年 24 巻 2 号 p. 333-343
近年,日本では個人情報保護に対する関心の高まりが主因となって,しばしば社会調査の実施の困難に直面する.継続的に社会環境の変化に対応していくためには,異なる文化・社会で生じている問題とその対応策について情報収集することを通して,日本における新たな社会調査の方法・工夫を用意しておくことが有効である.そこで試行的に,オーストラリアにおいて,社会調査の実施にあたっての問題・対応状況を把握するための聞き取り調査をおこなった.その結果,5つの側面で,日本での調査実施に対するヒントを得た.5つの側面とは,回収率とモード,個票データの利用,回収原票の管理,調査倫理,政府機関と大学との連携である.