2016 年 31 巻 2 号 p. 261-276
本稿では, 「過程の平等」に焦点を当てて分析を行う. 過程とは労働の過程を意味しており, 労働過程が平等に評価されており, 労働者が会社の評価基準を正しく把握している状態を過程が平等である, と考える. バブル崩壊後, 成果主義的賃金制度が導入されはじめ, 労働の成果が評価されるようになった. しかし, その評価には多くの企業が少なからず問題を抱えている. このような過程が不平等な状態で, いかなる帰結が生じるのか, ということを分析することが本稿の目的である. そのために, 評価に不正確さが存在する場合に, 労働者が最適な努力水準を決定する試作的なモデルを用いて分析する. また, 個人の能力の異質性も組み込んだ. その結果, 評価の不正確さと個人の能力に違いがある場合, 能力の高い人が高い努力水準を選択する一方で, 能力の低い人は低い努力水準を選択する, という結果が得られた. 努力水準を, 労働時間と解釈するなら, 能力の高い人と低い人の間で労働時間の格差が生まれることを示している.