2009 年 41 巻 1 号 p. 37-42
先天性筋無力症候群 (congenital myasthenic syndrome: CMS) は, 神経筋接合部構成分子の欠損/欠乏または機能障害によっておこる稀な疾患群である. アセチルコリン (acetylcholine: ACh) 受容体欠乏症によるCMS患者の診断・治療経過を報告する. 患者は生後5カ月に眼瞼下垂に気付かれ, 1歳6カ月時にテンシロンテスト陽性から重症筋無力症と診断された. 胸腺摘出術, ステロイド薬, taclorimus投与も効果なく, 10歳時には車椅子主体の生活となった. 抗ACh受容体抗体は終始陰性であった. 遺伝子解析でCMSに関する既知の変異は検出されず, 11歳時に神経筋接合部の選択的筋生検にて診断にいたった. 現在, 免疫抑制療法に代えて臭化ジスチグミン, 3, 4-ジアミノピリジンを開始し経過観察中である.