脳と発達
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症例報告
WDR45に変異を認めたbeta-propeller protein-associated neurodegeneration (BPAN) の1女性例 : 小児期の臨床症状と早期診断についての考察
森貞 直哉常石 秀市田口 和裕八木 隆三郎西山 将広豊嶋 大作中川 卓竹島 泰弘高田 哲飯島 一誠
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2016 年 48 巻 3 号 p. 209-212

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抄録

 Beta-propeller protein-associated neurodegeneration (BPAN) は, 脳内に鉄沈着をともなう神経変性疾患 (neurodegeneration with brain iron accumulation ; NBIA) の一つで, ヒトでは唯一報告されているオートファジーの異常による疾患である. 小児期に発症するが, 非特異的な発達遅滞を呈するなど自然歴に不明な点が多いため早期診断が難しく, 成人期に診断されることがほとんどである. 今回遺伝子解析によりBPANと診断された42歳女性例を経験した. 本症例は生後6カ月時の有熱性けいれんで発症してその後発達遅滞を指摘されたが, 特に言語発達の遅れが著明で, また常同運動と考えられる手しゃぶりが頻回に認められていた. てんかんは認めなかった. 運動面は比較的保たれ, 排泄や着替えなどの日常生活は自立し, 歩行や走ることも可能であったが, 20歳を過ぎて急速に神経症状が増悪して歩行不能となり, 42歳現在寝たきりの状態である. 本症例は21歳時のMRI検査では異常を指摘されなかったが, 39歳時に施行されたMRI検査で初めて鉄沈着症を疑われ, BPANの責任遺伝子WDR45のスプライス部位の変異 (NM_007075.3 : c.830+2T>C) を認めたためBPANと診断確定した. BPANは今後治療法の開発が期待できる疾患であり, 遺伝子診断を含めたBPANの早期診断法の確立が必要である.

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© 2016 一般社団法人日本小児神経学会
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