脳と発達
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症例報告
SMN1遺伝子内に微小変異を認めた脊髄性筋萎縮症1型の1例
山田 博之西田 吉伸松本 貴子毎原 敏郎西尾 久英
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2016 年 48 巻 5 号 p. 343-346

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抄録

 脊髄性筋萎縮症 (spinal muscular atrophy ; SMA) は, 脊髄前角細胞の変性, 脱落に伴う全身の筋力低下を生じる常染色体劣性神経筋疾患である. 責任遺伝子はSMN1遺伝子であり, SMA 1型の95%はSMN1遺伝子欠失のホモ接合体である. 今回我々は, 片側のSMN1遺伝子が欠失し, もう一方のSMN1遺伝子内に変異を認めるSMA症例を経験した. 本症例は日本人男児で, 新生児期から全身の筋力低下と呼吸障害を認め, 生後20日で非侵襲的陽圧換気を受けることになった. 患者の呼吸障害は急速に進行し, 生後3カ月で気管挿管下陽圧換気に移行し, 生後6カ月で気管切開下陽圧換気に至った. MLPA法を用いてSMN1遺伝子欠失を確認したところ, SMN1遺伝子は1コピー存在することを確認した. その後SMN1遺伝子の各塩基配列を検索したところ, エクソン6にc.819_820insTの微小変異を認め, SMN1遺伝子欠失と変異型SMN1遺伝子の複合ヘテロ接合体であることが明らかとなった. 臨床症状と遺伝子検査結果を踏まえ, 患者はSMA 1型と診断された. この変異はSMN蛋白のC末端の構造変化や機能異常をもたらすことが推測される. 本症例では, SMN1遺伝子内変異がSMAの原因となり, 重症度を規定している因子でもあることを示唆している.

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© 2016 一般社団法人日本小児神経学会
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