脳と発達
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症例報告
免疫抑制薬内服中に発症したEpstein-Barrウイルスによる脊髄炎の1例
大田 倫美浅沼 宏後藤 知英宍戸 清一郎幡谷 浩史三山 佐保子
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2017 年 49 巻 4 号 p. 279-282

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抄録

 移植後や免疫抑制下にある児において, Epstein-Barr (EB) ウイルス感染症は時に重篤な病態を引き起こす. 症例は10歳男児. 若年性ネフロン癆による慢性腎不全のため7歳時に腎移植を受け, 免疫抑制薬を内服中であった. 入院1週間前から発熱があり, 2日前より筋痛が出現した. 血清クレアチンキナーゼの上昇が認められ, ウイルス性筋炎の診断で入院した. 入院時, 強い下肢痛を訴え, 歩行困難であった. 入院7日目に殿部と外陰部の知覚障害および排尿障害に気づかれ, 歩行障害と合わせて脊髄炎が疑われた. 髄液中のEBウイルスのコピー数の増加があり, MRIでは第8胸椎以下の脊髄にT2強調像で高信号域を認め, EBウイルスによる脊髄炎と診断した. Cyclosporineの減量と抗ウイルス薬, steroid, γ-globulin投与により, 両下肢の運動機能は回復した. 入院6カ月前の血清EBウイルスの抗体価は既感染パターンであり, EBウイルスの再活性化による脊髄炎と考えた. 免疫抑制状態の患者における脊髄炎では, EBウイルスの関与を考慮する必要がある.

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© 2017 一般社団法人日本小児神経学会
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