脳と発達
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原著論文
重症心身障害児 (者) における肺膿瘍の検討
渡辺 淑小俣 卓星野 直水落 弘美児玉 一男岩瀬 由紀子
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2017 年 49 巻 5 号 p. 322-325

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抄録

 【目的】重症心身障害児 (者) における呼吸器感染症の予防・治療は, 生命予後を大きく左右する. 慢性的な誤嚥から肺膿瘍を含む重症呼吸器感染症に進展し, 多臓器病変の合併から重篤な経過をたどることもある. 肺膿瘍の早期診断・治療のため, 重症心身障害児 (者) における肺膿瘍の臨床像について検討したので報告する. 【方法】1993年4月から2014年8月の間に当院で肺膿瘍と診断し入院加療を行った, 大島分類が2以下の重症心身障害児 (者) 5例を対象に臨床的特徴について診療録より後方視的に検討した. 【結果】男性3例, 女性2例. 発症年齢は平均11歳 (4~34歳). 全例に側弯症と側弯凹側に一致する肺膿瘍, 誤嚥性肺炎, 無気肺の既往を認めた. 初発症状は5例中3例が発熱のみで, 全例に著明な白血球増多とCRP上昇を認めた. 全例が経過中に, 遷延する発熱と気道症状の悪化を呈し, 2例で胸部単純X線に腫瘤影を認めた. 胸腔穿刺を施行した4例中3例で, 嫌気性菌を含む口腔内常在菌の混合感染を確認した. 抗菌薬投与により軽快し, 外科治療を要した症例はなかった. 【考察】発熱のみであっても側弯を有する重症心身障害児 (者) は, 側弯凹側に肺膿瘍をきたす可能性があり, 遷延する発熱や炎症反応上昇, 胸部単純X線の腫瘤影は重症呼吸器感染症を疑う所見となる. 重症呼吸器感染症の予防には, 日常的な口腔ケアや体位ドレナージ, 適切な食事形態の評価が重要となる.

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© 2017 一般社団法人日本小児神経学会
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