脳と発達
Online ISSN : 1884-7668
Print ISSN : 0029-0831
ISSN-L : 0029-0831
症例報告
MRI画像から診断に至った乳児型歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症 (DRPLA) の1例
所 訓子星 みゆき小林 瑛美子赤座 花奈美阪下 達哉平田 和裕松波 邦洋松隈 英治熊崎 香織今村 淳
著者情報
ジャーナル フリー

2018 年 50 巻 6 号 p. 433-438

詳細
抄録

 乳児期発症の歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症 (dentatorubral-pallidoluysian atrophy ; DRPLA) を経験した. 症例は, 1歳2か月の男児で, 5か月の寝返り獲得まで正常発達であったが, 10か月健診で運動発達の遅れを指摘され紹介受診した. 家族歴やてんかん発作を認めなかったが, 頭部MRI画像で小脳と橋被蓋部の萎縮を認めたため脊髄小脳変性症を疑った. 遺伝子解析の結果, ATN1に93のCAGリピート伸長を認めDRPLAと診断した. 本症例は, 典型的な家族歴や臨床像を認めず, MRI画像が大きな決め手となり早期の段階で診断に至った症例である. 乳児期発症のDRPLAは, 若年型で特徴とされるてんかんやミオクローヌスを伴わず, 発達の遅れを主体とし, 筋緊張の異常や不随意運動など非典型的な初期症状が多い. 診断には, MRI画像での小脳と橋被蓋部の萎縮が重要な所見である. また遺伝性のある本疾患は, 早期発見であればあるほど家族対応への慎重な配慮が不可欠となる. 予後改善が見込めない疾患では, 検査実施前に遺伝子検査の意義を多職種で十分に検討しなくてはいけない. 家族の心理社会的な支援や, 家族間に発生する問題に備えた体制を整えておくことが重要である.

著者関連情報
© 2018 一般社団法人日本小児神経学会
前の記事 次の記事
feedback
Top