脳と発達
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症例報告
経時的に抗MOG抗体価を評価した多相性急性散在性脳脊髄炎の1例
隈井 すみれ山本 啓之中田 智彦城所 博之藤浦 直子柴田 元博金子 仁彦高橋 利幸夏目 淳
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2020 年 52 巻 6 号 p. 414-418

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抄録

 急性散在性脳脊髄炎 (acute disseminated encephalomyelitis ; ADEM) において, 抗myelin oligodendrocyte glycoprotein (MOG) 抗体が陽性の症例が報告されているが, 抗体価の経時的変化が治療方針決定に有用かは明らかでない. 今回, 抗MOG抗体陽性の多相性ADEMの1例で免疫グロブリン療法 (intravenous immunoglobulin ; IVIG) を行い, 経時的に抗MOG抗体を評価したため報告する. 症例は9歳男児. 頭痛, 異常言動を認め頭部MRI T2強調像, FLAIR像で皮質下白質に散在する高信号域を認めADEMと診断した. ステロイドパルス療法で寛解するも, ステロイド漸減に伴い頭痛, 異常言動が出現しMRIで新規病変を認め, 計3回の再発を認めた. 発症5か月から月に1回のIVIGを開始し, 以降再発を認めていない. 抗MOG抗体価は発症時からIVIG開始までは4,096倍から2,048倍で推移したが, IVIG開始後は徐々に低下した. 抗体価の低下を確認しながらprednisoloneを漸減, 終了し, 発症から1年3か月でIVIGを減量開始, 発症1年9か月でIVIGを終了した. 多相性ADEMにおいて経時的な抗MOG抗体の測定はADEMの病勢を把握し治療の漸減や中止時期の決定に有用な可能性があり, 多数例での検討が必要と考えられた.

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© 2020 一般社団法人日本小児神経学会
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