脳と発達
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原著論文
医療的ケア児支援法施行後の教育機関と養育者の意識調査―教育と医療の円滑な連携に向けて―
日隈 のどか小林 梢加藤 光広
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電子付録

2024 年 56 巻 3 号 p. 213-218

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抄録

 【目的】2021年9月に施行された医療的ケア児支援法によって,国や地方自治体の医療的ケア児への支援が努力義務から責務となり,教育現場にはさまざまな影響が予想される.今回,自施設の位置する東京都城南地区の教育機関と医療的ケア児の養育者に対し,養育者が抱える問題点,教育機関の現状,本法律の影響について調査した.【方法】東京都城南地区の公立校には郵送で,当院通院中の医療的ケア児の養育者には手渡しでアンケート調査を行った.対象は,公立小中高等学校210校と特別支援学校6校,養育者48名である.【結果】普通学校の38%,特別支援学校の67%,医療的ケア児の養育者44%(21名/48名)から回答を得た.普通学校では医療的ケア児が在籍している学校が14%,本法律の認知度が教職員の半数以上である学校は18%で,受け入れに困難を感じる学校が80%以上であった.特別支援学校からは設備不十分や教員不足といった問題点が挙げられた.養育者の86%が介護のため深夜に起床し,57%は自分の自由時間が2時間未満であった.38%が学校に付き添っており,養育者が本法律に期待することは,医療的ケアが可能な教職員の配置・増員,仕事と子育ての両立,保護者の付き添い無しの通学が多かった.【結論】教育現場での法律の認知度はまだ低く,教育機関の現状と養育者の期待には乖離がある.医療的ケア児支援法の立法趣旨を実現し,インクルーシブ教育を推進するためには,医療的ケア児支援法の周知と教員に対する支援のための円滑な連携が必須である.

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© 2024 一般社団法人日本小児神経学会
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