脳と発達
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<シンポジウム15:日本遺伝子細胞治療学会―日本小児神経学会(JSGCT-JSCN)連携シンポジウム難病に対する遺伝子治療実用化への展開>
日本における脊髄性筋萎縮症の新生児スクリーニングの費用対効果分析
羽田 明宇田 晃仁
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2024 年 56 巻 5 号 p. 348-352

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抄録

 脊髄性筋萎縮症(SMA)は常染色体潜性遺伝形式の単一遺伝子疾患である.原因となる遺伝子は染色体5q13に座位があるsurvival of motor neuron 1SMN1)で,95~98%は両アレルの欠失,残りの2~5%は機能喪失型の病的遺伝子多型が原因である.前者の両アレル欠失は現行の公的新生児スクリーニング(NBS)に用いるろ紙血を試料とする検出法が確立されている.SMAの治療薬剤が開発され,症状が明らかになる前に治療を開始すれば,運動発達障害の発生を防ぐあるいは遅延させることが,先行して実施された国において明らかとなった.発症前診断にはNBSが欠かせないが,薬剤の費用が極めて高額であることから,治療の妥当性に議論がある.本研究では,日本の医療制度において,SMAのNBSを導入して早期治療を開始する場合と,導入しない場合とを比較した費用対効果を分析した.その結果,我々の設定した条件の下では,公的医療の立場にたった基本分析および,社会的立場を考慮したシナリオ分析の双方において費用対効果が高いことが明らかとなった.この結果は,SMAを従来の公的NBSに導入するという施策を議論する上で,重要な知見であると考えられる.

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© 2024 一般社団法人日本小児神経学会
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