1978 年 10 巻 6 号 p. 439-445
人の骨格筋はATPase染色でtype I, IIA, IIB, IIC線維の四種に分けられる. IIC線維は胎児にみられる未分化な幼若な線維で健康人にはほとんどみられない. このIIC線維が乳児期の各種神経筋疾患で高頻度に認められたのでその意義について考察した. Werdnig-Hoffmann病の3例では全例にIIC線維が認められ, その頻度は症例ごとによって異なっていたが, 個々の筋束では8-65%に存在し, 平均20%であった. 福山型先天性筋ジストロフィー症では26.3%に, 生下時頸髄損傷をうけたと思われる麻痺児では8.8%であった. 各種筋疾患で再生した筋もIIC反応を示すとされているが, 今回の例では再生現象はあってもきわめて少ないと思われる. よってこの多くのIIC線維は筋が分化する以前あるいは途中で何らかの傷害が加わったため, 分化が停止ないし遅延した結果と思われる.