脳と発達
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全外眼筋麻痺, 運動失調, 腱反射消失を主徴とした特発性多発性神経炎 (Fisher症候群) の1例, および60例の文献的考察
須田 年生二瓶 健次鴨下 重彦
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1979 年 11 巻 4 号 p. 321-327

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抄録

全外眼筋麻痺, 運動失調, 腱反射消失を伴った特発性多発性神経炎の13才女児例を報告し, 60例の文献的考察を行なった. 患児は, 上気道感染の8日後に複視, 構音障害, 嚥下障害, 歩行時のふらつき, 手足のしびれ感を主訴として入院した. 外眼筋麻痺, 眼瞼下垂, 咬筋, 顔面筋, 頸部屈筋の筋力低下, 小脳性運動失調, 深部腱反射の消失を認め, Fisher症候群と診断した. 筋電図は, 下肢筋で多相性で高振幅NMUを示した. 髄液における蛋白細胞解離は, 発症より第18病日目に初めてみられ, 第74病日まで続いた. 第35病日には, 躰幹の運動失調および構音障害は消失した. 第43病日には, 知覚麻痺が消失した. 軽度の外転神経麻痺と腱反射消失が第100病日まで続いたが, 以後軽快し, 完全治癒した. 再発は2年以上ない.
文献上, 60例のFisher症候群のうち, 15才以下の例が22例ある. 鑑別疾患としては, Guillain-Barre症候群, 脳幹脳炎, 急性小脳失調が挙げられ, 臨床像は互いに異なるが, 病因及び予後の点で, Fisher症候群との類似点をもつと思われる. 本症候群は, 全外眼筋麻痺 (45/57), 強度の運動失調 (60/60), 腱反射消失 (60/60), 再発例が少ない (2/60) といった臨床的特徴をもち, 比較的, 小児期に発生頻度が高いことを指摘した.

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© 日本小児小児神経学会
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