脳と発達
Online ISSN : 1884-7668
Print ISSN : 0029-0831
ISSN-L : 0029-0831
出血傾向をもつ乳児にみられた急性頭蓋内血腫
2例の経験
岡本 順二津田 敏雄橋本 常世水井 三雄
著者情報
ジャーナル フリー

1979 年 11 巻 5 号 p. 445-451

詳細
抄録

最近, われわれは出血傾向を有する乳児の頭蓋内血腫を2例経験し, その出血原因である基礎病態を把握した上で, 出血コントロールを行ないつつ, 血腫を除去し, 術後良好な経過をみたので文献的考察を加えて報告した. 症例1は8ヵ月男児で急性硬膜下血腫. これは血友病Aであった. 第皿因子製剤にて出血をコントロールしつっ穿頭洗浄術で血腫を除去 (35ml) した. 術後の経過は順調であった. 症例2は生後47日の女児. 診断は急性硬膜下血腫と脳内出血でビタミンK欠乏による出血傾向のあることが判明した. ビタミンK投与により出血時間, トロンボテスト値等が正常化したので, 開頭の上, 血腫を除去した.術後は神経学的脱落症状もなく順調に発育している. 乳児の頭蓋内出血にはこのような出血性素因に基づくものがあり, 救急時にもそのことを念頭において, 家族歴や既往歴をよく聞くとともに, 出血傾向の有無の検索も救急加療と同時に平行して行なうことが必要である.

著者関連情報
© 日本小児小児神経学会
前の記事 次の記事
feedback
Top