脳と発達
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小児及び成人の多発性筋炎の電顕的研究
筋肉内毛細血管の変化を中心にして
三杉 信子
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1980 年 12 巻 1 号 p. 27-35

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抄録

小児の多発性筋炎は壊死性血管炎から起因されるものであって, 成人の場合とは異なるものであるとする考えが広く信じられている.しかし両者の病理学的所見の比較については報告がない.著者は電子顕微鏡によって多発性筋炎の小児5例, 成人3例の生検筋について約350個の毛細血管の横断面を観察し, 内皮細胞の変化, 基底膜の異常, tubular structureの存在などを主として観察し準定量的に分析を行なった.
1) 内皮細胞の変化: 即ちpale swollen endotheliumや血管内腔の狭小化の所見は, Walton-Adams II型の小児では43.4%から91.8%に認められた.しかしWalton-Adams III型の1例では6.5%にすぎなかった.一方, 成人例では37.2%から68.5%に異常を認めた.
2) systemic lupus erythematosusなどで報告されている内皮細胞内のtubular structureは成人と小児の全例で内皮細胞の小胞体の中やperinuclear cisternaの中に認められた.また, pericyteや血管周囲の平滑筋中にも見出された.これは異常血管内に出現することが多い傾向はあるが正常の内皮細胞の中にも認められた.
3) 基底膜の重複, 肥厚などの変化は, 小児では3.3%から23%に認められた.成人では2.3%から5.7%に認められた.これはDuchenne型筋ジストロフィー症で71.4%に存在し, 多発性筋炎に特異的な所見とはいえなかった.
小児の多発性筋炎に特異的とされている血管炎の所見は, 成人に於いても観察された.血管変化は小児多発性筋炎のみに限られた所見ではなかつた.血管変化が少ない症例もあり, 病因を血管炎以外のものにも求められるべきである.
小胞体内のtubular structureは病型及び小児成人の区別なく全例に容易に見出された.これは診断上重視してよい所見と考える.

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© 日本小児小児神経学会
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