脳と発達
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点頭てんかんの発症と予防接種の関連について (第2報)
土屋 節子植松 文江香川 和子福山 幸夫
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キーワード: 点頭てんかん, 予防接種
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1980 年 12 巻 4 号 p. 266-272

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抄録

点頭てんかんと予防接種の因果関係について, 前回は1968年3月から1972年3月までに女子医大を受診した点頭てんかん患者185例につき調査を行ない報告したので, 今回はその後の1972年4月から1977年3月までの199例につき報告する.
予防接種後30日以内に点頭てんかんが発症した症例は22例あり, これらは両者の因果関係か否定できない症例として検討した.すなわちa) 他の原因となる傷害要因の有無, b) 予防接種前の精神運動発達状況, c) 予防接種から点頭てんかん発症までの期間, の3条件を組合わせて, 予防接種と点頭てんかんの因果関係の密接さを評価した.
この基準に従うと1) 予防接種以外に原因となる因子の存在しないこと, 2) 予防接種前の発達が正常であったこと, 3) 予防接種から点頭てんかん発症までの期間がDPTは48時間以内, 種痘, ポリオ, BCGでは4~18日内のものが最も両者の因果関係の強いものである.しかし, この基準にあてはまる症例は神経合併症のほとんどないとされているポリオとBCGワクチンの各々1例にすぎなかった.
また本邦では, 1975年予防接種法の改正があり, DPTは2歳以後, 種痘は3歳以後接種に変更された.しかし, 大幅な接種対象年齢の引き上げにもかかわらず, 点頭てんかんの発症年齢分布には何の変動も認められなかった.
以上より, 予防接種が点頭てんかんの直接原因となり得る可能性は前回の報告より更に強く否定され, 両者は単なる時期的偶然の一致と考えられる.

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© 日本小児小児神経学会
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