脳と発達
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筋強直性ジストロフィー症
2家系6症例の臨床像並びに電気生理学的知見について
中野 省三北條 博厚片岡 健吉
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1981 年 13 巻 1 号 p. 11-18

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抄録

筋強直性ジストロフィー症の2家系6症例 (両家系とも兄妹及びその母親) について報告した. いずれの症例も顔面筋, 胸鎖乳突筋及び四肢遠位部に筋萎縮及び筋力低下を認め, 叩打により筋強直を認めた. 白内障は5例に認め, 血清CPKは同一家系の3症例では高値であったが, もう一方の家系の3例は正常範囲であった. 血清IgGは2例で低値であった. 精神遅滞は小児例4例に認め, 新生児期発症と思われる2例の方が重度であった. CTスキャンでは全例に脳萎縮像を認めた.
筋生検は2例に行ない, 筋線維大小不同, 核鎖状配列を認めた. 腓腹神経生検では異常は認めなかった.
筋電図検査では, 腕橈骨筋を中心として上腕二頭筋, 前脛骨筋などで全例に筋強直電位を認めた. fasciculation, fibrillationは認めず, 神経筋単位のamplitude, durationは正常に保たれ, 一部に多相性変化を認め, 軽度の神経原性変化が疑われた.
末稍運動神経伝導速度は尺骨神経, 腓骨神経において有意に低下していた. 知覚神経伝導速度は, 腓腹神経及び手根-肘窩部の正中神経では正常であったが, 指-手根部の正中神経では有意に低下していた.
筋強直性ジストロフィー症が多彩な臨床症状を呈することは報告されているが, 運動, 知覚を問わず末稍神経障害も起こり得ることを文献的考察を加えて示した.

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© 日本小児小児神経学会
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