脳と発達
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Ataxia-telangiectasiaの免疫病理
鴨下 重彦
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1981 年 13 巻 3 号 p. 195-199

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抄録

自験6例の病理所見および最近の文献よりataxia-telangiectasia (A-T) の特徴を以下のごとく整理した.
1) A-Tの胸腺はリンパ球の減少,Hassall小体の消失など形成不全が全例に認められ,原発性免疫不全症候群の主要な一型である.ただし,胸腺の変化にはage involutionと思われるものもあり,また少数ではあるが,免疫不全を示さない症例が存在する.
2) 悪性リンパ腫を合併した症例があり,文献上もリンパ系悪性腫瘍や,脳腫瘍,癌で死亡する例が次第に増加しており,A-Tは遺伝性癌化症候群と考えられる.
3) 中枢神経系を中心に病理学的に早発老化の変化が著しい.臨床的にも皮膚,毛髪,体型などからprogeriaに類似する.
4) 全身のほとんど総ての臓器に著明に認められる巨核症nucleomegalyが本症に最も特徴的な病理所見であり,これは細胞の分裂・再生あるいはDNA修復機構の障害を示す所見と考えられる.

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© 日本小児小児神経学会
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