脳と発達
Online ISSN : 1884-7668
Print ISSN : 0029-0831
ISSN-L : 0029-0831
血清酵素
植田 啓嗣
著者情報
ジャーナル フリー

1981 年 13 巻 3 号 p. 249-254

詳細
抄録

CPKは臓器内では骨格筋, 心筋と脳の3臓器に含まれ, その血清値は骨格筋, 心筋と神経系の疾患で上昇がみられる.
この場合の組織内のCPKが血清に漏出する機構であるが, 組織崩壊が起こる多発性筋炎や心筋梗塞, それにある物質が蓄積する種々の蓄積症では理解はしやすい.しかし脳卒中発作後に上昇する血清CPKが脳由来ではなく骨格筋由来であることは誠に奇異で, そこに神経興奮による筋鞘 (細胞膜) 自体の透過性の変化が示唆されよう.
Duchenne型筋ジストロフィー症は男児にのみ発症し, その罹患筋は3次元的な拡がりを持って, 年単位で進展し, 末期には骨組織をも含めた多肢にわたる臓器が侵襲される。このような点からみると, 本症はprimary myopathyの範ちゅうを脱した遺伝性の全身的な代謝調節障害ともいうべきで, とりわけそこに自律神経関与の印象を強く与える.
そのため私共は。家兎を用いて, 視床下部のb交感帯を電気刺激してみたが, 血清CPK値は著明に上昇した.また薬剤を用いても, α-Stimulatorで上昇が, 逆にβ-Stimulatorと女性ホルモンの併用でその上昇に抑制が認められた.この結果より, ある種の疾患の血清CPK値の上昇には, α 系の興奮が重要な役割を演じていることが判った.
Duchenne型ではβ-stimulatorと女性ホルモンの併用で血清CPK値は著明に低下した.しかしその状態のもとでも筋力は回復しなかった.そのため今後は, CPKの漏出を筋弱力機構と結びつけて, 更に検討してゆく必要があるものと考えている.

著者関連情報
© 日本小児小児神経学会
前の記事 次の記事
feedback
Top