1982 年 14 巻 3 号 p. 311-315
小児白閉症の障害を生理学的側面から検討する目的で二つの実験を行い事象関連電位 (ERP) を測定した.実験Iでは自閉症8名 (10-22歳) と正常者12名 (10-21歳) について聴性誘発電位 (AEP) を記録した.自閉症ではT3・T4からのAEPのN100潜時の加齢による短縮がみられないなどの結果が得られた.実験IIでは規則的音系列の中に低頻度に目標が出現する刺激を用いて, 白閉症4名 (12-17歳), ダウン症・正常者各4名について,「音をよく聴く」・「目標を数える」などの課題遂行時のERPをCzから記録した.自閉症では「よく聴く」課題ではP300が低振幅で「目標を数える」課題で正常者と同程度の振幅に達した.この結果から自閉症では能動的注意機能に障害があると考えられた.