脳と発達
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高乳酸血症を伴ったミトコンドリアミオパチー2症例の電顕的研究
小林 康子宮林 重明高田 五郎成沢 邦明多田 啓也
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1984 年 16 巻 4 号 p. 253-261

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抄録

高乳酸血症を伴った小児のミトコンドリアミオパチーの2症例について, 大腿四頭筋および直腸粘膜の生検材料を電顕的に観察し, 以下の所見を得た. (1) 種々のミトコンドリアの異常が骨格筋のみならず直腸粘膜筋板の平滑筋細胞にも認められた. (2) 骨格筋および直腸粘膜筋板内に分布する連続性毛細血管の多くは, 内皮細胞が高度に肥厚または膨化し, 血管内腔はほとんどふさがれていた. (3) したがって, 筋組織は毛細血管の閉塞による血流障害のため, 長期にわたり虚血状態におかれていると考えられた. (4) 直腸粘膜上皮細胞にはミトコンドリア異常が認められず, 粘膜固有層に分布する有窓性毛細血管もほぼ正常の構造を示した. これらの所見に基づき, 本症例における骨格筋および平滑筋細胞のミトコンドリア異常は, 長期の虚血状態の結果もたらされたものと推論した. 生化学的には, 線維芽細胞または血小板のpyruvate dehydrogenasecomplex, pyruvate decarboxylase, α-ketoglutarate dehydrogenase complex, α-ketoglutarate decarboxylaseおよびpyruvate carboxylase活性に異常がなく, 筋組織のcytochrome Coxidase活性も正常であり, 本症例の高乳酸・高ピルビン酸血症も, 筋細胞の虚血により二次的に出現したものと思われた.

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© 日本小児小児神経学会
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