1990 年 22 巻 3 号 p. 267-273
ホパンテン酸カルシウム (HOPA) 投与中に意識障害がみられた3歳男児例を経験した.発作時尿有機酸分析にて大量の乳酸, ケトン体, 中鎖・長鎖の飽和および不飽和ジカルボン酸に加え, ペルオキシゾーム病の際にみられる2-OH-sebacicacidも認められた.頭部CTでは後頭葉白質中心に低吸収域がみられ, MRIT、強調画像で白質に高信号域が散在していた.
患児の基礎疾患として白質病変の存在が示唆された.大量のHOPA投与によりCoAの産生が抑制され, 特に感染によってミトコンドリアおよびペルオキシゾームのβ酸化障害が顕著となり, さらにジカルボン酸が増加し, 糖新生系・電子伝達系等への障害が加わり低血糖・意識障害が発症したものと考えられた.