1991 年 23 巻 2 号 p. 200-206
超音波ドプラ血流計を用い, 血管抵抗の指標であるpulsatility index (PI) を前大脳動脈 (ACA), 脳底動脈 (BA) の両血管で, 新生児, 乳児水頭症8例について経時的に測定し, 対照群111名と比較した. また水頭症群では経皮的大泉門圧 (AFP), 側脳室体部径 (LVS), 血圧 (収縮期BPs, 拡張期BPd) を併せて観察し, 次の結果を得た.
1) 正常群, 水頭症群ともACAとBAのPIは有意の相関をもって変化した.
2) 水頭症群のACA, BAのPIはシャント術直前mean±SE;ACA: 0.80±0.0458, BA: 0.81±0.0492からシャント術後6時間でACA: 0.65±0.0510, BA: 0.70±0.0450と急激に低下し陥凹 (post shunting dip) を認めた後ほぼ一定の値をとった.
3) AFPとPIの関係ではAFPが高いときACA, BAのPIは高い傾向があった. LVSとPIの関係ではシャント前, LVSが大きいとACA, BAのPIが高い傾向があった. BPとPIの関係ではシャント後, BPdが上昇するとACA, BAのPIが低下する傾向があった.
以上, 水頭症児のPIを経時的に観察し, 脳血管抵抗の推移を明らかにすることは, 水頭症における脳の血行動態面の変化を推測する指標として有用であった.