1994 年 26 巻 4 号 p. 308-312
例のmigration disorder (MD) の中枢神経機能を各種の誘発電位を用いて検討した. その結果, 短潜時体性感覚誘発電位では全例に異常がみられ, 脳幹機能障害 (P3の振幅の低下あるいはP3以降の成分欠如) を4例, 大脳皮質障害 (N1以降の成分欠如) を2例に認めた. 聴性脳幹反応では脳幹機能障害 (V波の振幅の低下) を3例, 末梢障害 (1波の潜時の延長) と全成分の振幅の低下を1例に認めた. 視覚誘発電位は全成分の振幅の低下を2例に認めた. その他, 体性感覚誘発電位にて2例に, 中間潜時反応にて3例に大脳皮質成分の出現が不良であった. 腓骨神経刺激による脊髄誘発電位は5例において正常であり, 脊髄機能は異常がなかった. 以上より, MDの病態生理を電気生理学的に検討すると, 知覚路の異常が高率に認められ, しかも, 大脳皮質障害のみならず, 脳幹部あるいは末梢部にも機能障害を認め, 病態生理の多様性が示唆された.