1997 年 29 巻 5 号 p. 367-372
多飲と抗利尿ホルモン分泌異常症候群 (syndrome of inappropriate secretion of antidiuretichormone, SIADH) により水中毒に陥った思春期の自閉症男子を2例経験した. 水中毒の症状は少なくとも数年間持続し, ともに重度精神遅滞を合併し, 1例は当初心因性の行動異常として治療されていた. 軽度な飲水制限のみで症状は消失し日々の飲水量も減少してきた. 向精神薬や抗てんかん薬などの関与は否定され, 水中毒は自閉症そのものに内在する病態によると思われた. 自閉症の療育上, 視床下部下垂体前葉系のみならず下垂体後葉系を含めた飲水行動や水電解質異常を考慮する必要があると考えられた.