脳と発達
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重症脳性麻痺乳児への上田法短期治療で何がどう変わったか
2症例での経験
東條 恵
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1998 年 30 巻 1 号 p. 75-79

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抄録

重度の痙直型脳性麻痺乳児2例に, 理学療法の一つである上田法の短期間 (5, 10日間) 施行で, 病的筋緊張亢進状態の改善と興味ある臨床変化がみられた.治療開始日に, 外, 内転筋群の筋緊張減弱の程度の差に基づく, 未治療時になかった治療上肢の外転位, 治療下肢の内転位, 鋏足がみられた. 原始反射は興味ある変化を示した. 痙縮主体例では非対称性緊張性頸反射 (ATNR) の減弱が5日間でみられ, 固縮と痙縮の混在例でATNRは出現し, 自動歩行は治療開始3日後消失した. これらの反射の減弱, 消失が短期間であったことは中枢神経系の成熟期間は必要ないこと, そして痙・固縮の神経回路とこれらの反射の神経回路の関連が示唆された. Moro反射は2例で筋緊張亢進状態の減弱とともに出現し, 筋の病的過緊張がMoro反射を抑制していた可能性を示唆した.

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© 日本小児小児神経学会
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