1998 年 30 巻 2 号 p. 101-108
医療における生命倫理を論じる基本的原則は, 医師が患者からインフォームド・コンセントを得ることであるが, 重症神経障害児を含む判断能力の未熟な子供の場合には, 医師が患児に医学的侵襲を与えてもよいという親権者の承諾の上での医療の同意についての代理意思決定が必須である. そのために, 医師は親権者にわかるように説明しなければならない. 子供の重症神経障害である重症二分脊椎などの神経管障害や, クレチン症やフェニールケトン尿症などの先天性代謝異常症, 神経芽腫や網膜芽細胞腫などの悪性腫瘍, それに難治てんかんをめぐる生命倫理について論じた. 重症神経障害児の早期発見のための出生前診断をめぐる生命倫理も検討した.