脳と発達
Online ISSN : 1884-7668
Print ISSN : 0029-0831
ISSN-L : 0029-0831
感染に伴う急性発症脳炎28例の臨床像
木村 清次根津 敦夫大槻 則行武下 草生子
著者情報
ジャーナル フリー

1999 年 31 巻 4 号 p. 317-321

詳細
抄録

過去10年間のウイルス感染に伴う急性脳症/脳炎75例中で, 脳炎と診断したのは28例のみである.今回はこの28例の概要を検討した:(1) ウイルス感染の発熱時発症脳炎 (A群) と解熱後発症脳炎 (B群) は各々15例と13例で, 前者は乳幼児, 後者は学童の比率が高かった. (2) A群とB群の画像は散在多発性病変が1例と3例, 限局性病変が7例と8例, 正常が7例と2例であった. (3) A群の限局性脳炎7例では単純ヘルペスが5例, 血管炎を疑う例が2例, B群の限局性脳炎8例では血管炎を疑う例が3例で, 脳炎発生に血管炎が重要因子と思われた. (4) ヘルペス脳炎5例の病変は後頭葉が主で, 側頭葉限局は1例のみであった. (5) ウイルス侵入に伴う脳実質内病変と炎症反応が確認されたのはヘルペス脳炎のみで, 多くは発生機序が不明で分類が困難であった. (6) 急性発症の「脳炎」には急性脳炎, 傍感染性脳炎, 感染後脳炎などの用語が存在するが, これらはあくまで概念的なものであり, 正確な診断名としては使用しにくかった.今後は診断基準の再評価や検査方法の開発が望まれる.

著者関連情報
© 日本小児小児神経学会
前の記事 次の記事
feedback
Top