脳と発達
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抗グルタミン酸受容体δ2抗体が陽性の慢性小脳炎の1例
杉山 延喜浜野 晋一郎望月 美佳田中 学高橋 幸利
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2004 年 36 巻 1 号 p. 60-63

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抄録

症例は3歳8カ月の男児. 1歳8カ月時に先行感染の後に小脳失調を呈した. 急性小脳失調症と考え経過観察したところ, 1カ月後も小脳症状が持続していたため免疫グロブリン大量静注療法およびステロイドパルス療法を施行した. しかし小脳症状は残存しその後も感染に伴い増悪し, 3歳8カ月現在小脳症状の持続と知能障害を残している. MRIおよびSPECTでは異常所見は認めなかった. 髄液細胞数は初期のみ高値だったがneuron specific enolaseは高値が持続し, 小脳症状増悪時により高値となり病勢を反映した. また, 血清および髄液において抗グルタミン酸受容体δ2抗体が陽性であった. グルタミン酸受容体δ2は小脳のPurkinje細胞に特異的に存在することが推定されており, 抗グルタミン酸受容体δ2抗体の持続的な存在により慢性的に神経細胞が傷害されていると考えられ, 慢性小脳炎と診断した. 病初期に急性小脳失調症と診断される症例の中に本症のように症状が遷延し慢性小脳炎と診断すべき症例が存在することに留意すべきである.

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© 日本小児小児神経学会
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