抄録
障害者を取り巻く環境は, 社会のバリアフリー化, インターネットの普及, 医療技術の進歩などにより, 着床前診断が始まった1995年ぐらいからの10年間で, 著しく向上している. 科学技術の進歩は, 障害者に幾多の恩恵をもたらす一方で, 命の選別の技術も生み出した. 出生前診断も着床前診断も当事者である障害者にとっては認めがたいものであるが, 前者は「敗者復活」の余地が残されている点で, 後者より幾分ましである. こういった技術の普及を恐れるのは, 事例が増えていくにつれ, 世の中の流れが急激に変わるターニングポイントが必ずやってくるからだ. 障害者を含む社会的非生産者を排除する社会の到来に結びつきかねない技術を検証する.