脳と発達
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神経疾患における脳内レドックスの解析とその役割
植田 勇人
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2008 年 40 巻 2 号 p. 103-108

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抄録

てんかん性病態は興奮系シナプス伝達などの機能的変化と辺縁系組織障害などの形態変化が並行して進行する病態である.「興奮系の機能変化」に関しても「辺縁系の形態変化」に関してもグルタミン酸は多義的な機能関連性を有している.プロレオミクス・ゲノミクス解析によるてんかんの病態解釈も重要であるが, フリーラジカル・活性酸素種とその防御システムの均衡であるレドックスの役割解明は病態解釈をさらに深化させるものと考える.グルタミン酸の病態関与にはグルタミン酸トランスポーターや同受容体の賦活過程が深く関与し, さらに両蛋白はいずれもレドックス感受性であるため, レドックス状態の変化によってその蛋白機能は修飾を受ける.本来脳組織はビタミンE-C系やグルタチオンなど強力な抗酸化システムで酸化ストレスから保護されており, 多少のフリーラジカルの発生では脳内レドックスの均衡系は崩壊することはない.しかし, てんかん発作とそれに伴う脳虚血・低酸素などの酸化ストレスの履歴によって抗酸化システムが疲弊し, レドックス均衡が崩壊するに及んで, 次第にグルタミン酸トランスポーターや同受容体が機能修飾を受けるに至る.グルタミン酸の興奮毒性を考察する上では, 病態の進行とともに変化していくレドックス状態の解析が, 様々な神経疾患の病態を解明する上で重要視されなければいけない.ここでは神経疾患, 特にてんかんの分子病態におけるレドックスの役割について紹介する.

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© 日本小児小児神経学会
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