脳と発達
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Theophylline内服後に非けいれん性てんかん重積を来した1男児例
延時 達朗高橋 純哉庵原 俊昭
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2008 年 40 巻 4 号 p. 328-332

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抄録

歳男児, 生来健康で発達に問題なく, 熱性けいれんの既往やてんかんの家族歴は認めない. 発熱を伴わない軽微な咳噺のため, theophyllineを初めて内服した翌日に急な嘔吐, けいれん発作を来し搬送された. 血中濃度は19.7μg/ml, けいれんはdiazepam静注で頓挫したが, 持続する意識障害を認めたため, 連続脳波モニター検査を行った. 右大脳半球優位に連続する棘波, 棘徐波を認め, 非けいれん性てんかん重積と診断した. Midazolam静注計0.5mg/kgにて連続性の発作波は次第に右中心から後頭領域に限局する傾向を呈した. 引き続き持続静注療法 (0.2mg/kg/hr) を行い, 翌日には発作波は完全に消失, 神経学的後遺症なく回復した. 本例では, theophylline内服により側頭葉内に過剰興奮が生じ, 最初に複雑部分発作を発症, そして, 過剰, 興奮が急速に両側大脳半球に伝播した結果, 全身性けいれんが生じたこと, さらにdiazepam静注により, 発作波が右大脳半球内に狭まったために複雑部分発作重積状態 (CPSE) に進展した可能性が推測された. したがって, theophylline関連けいれんでは, けいれん頓挫後でも非けいれん性てんかん重積 (NCSE) を発症する可能性に対して, 注意深い観察が重要であると考えられる. これまで同製剤により誘発された非けいれん性てんかん重積は文献上1例報告されているが, このような重大な副作用を来す可能性に対し, 今後さらに留意する必要があると考えられた.

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© 日本小児小児神経学会
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