脳と発達
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特異な臨床経過を示す亜急性硬化性全脳炎の1例
中根 允文森田 武東藤井 薫渡辺 鈴子
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1974 年 6 巻 4 号 p. 304-312

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抄録

現在10才になる女児に認められた興味ある経過を示した亜急性硬化性全脳炎の症例を報告する.
1965年4月麻疹に罹患し, その後約6年して, 6才10ヵ月の時から知能低下と尿失禁が出現し, 徐々に悪化, まもなく視力低下, 歩行障害, ミオクローヌス発作などの症状も加わつた.脳波所見は臨床像の経過にほぼ平行して変化し, 7~8秒間隔で出現する周期性徐波の群発といつた典型的所見を示すようになつた.
血清中の麻疹ウィルス抗体価はNTにおいて1, 024倍, CFで128倍と上昇を認めた.脊髄液の電気泳動によりγ-Globulinが19~32%と高値を示した.
患児は発病後1年半より徐々に軽度ながら全般的に寛解が認められ, ミオクローヌス発作は消失し, 歩行障害も著明に改善し, かなりの意志の疎通が可能となつた.1973年2月からAmantadine-hydrochloride5mg/kg/dailyの投与を開始したが, 開始数日前より軽度改善の微候は見え始めており, 本例ではその効果は長期的には認めえず, 発症後2年経てから再び増悪し, 現在 (発症後3年) はFreemanの分類に従えばII-Cの段階に至つている.

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© 日本小児小児神経学会
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