脳と発達
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抗てんかん薬測定の進歩と今後の問題点
宮本 侃治
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1974 年 6 巻 6 号 p. 444-455

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抄録

抗てんかん薬の測定は1968年以降著しい進歩を示して, 現状では殆どすべての抗てんかん薬の測定が可能となり, 薬物治療の適正さを確認する手段をえたといえよう.
まず血中濃度に影響を与える諸因子について分析し, 次に測定法の変遷を比色法, 紫外部吸収測定法, 薄層クロマトグラフ (TLC), ガスクロマトグラフ (GLC), および最近登場したradioimmunoassay (RIA), enzyme immunoassayについてのべた.特に現在広く用いられているGLCの一方法について詳述し, それによつてえられた血中, 髄液中の濃度を報告し, いくつかの問題点についてふれた.
混合使用中の薬物の個々の濃度を知ることにより, 次の諸条件に対して有効であると考える.
1) 中毒症状を避けるためにはどの薬物が過剰量であるかを知ることができ, もし中毒症状をおこした場合にはそれに適応した薬物の種類とその量を定めることができる.
2) 個々の患者の個体条件が変化した場合も, それに応じた薬物の種類とその量を定めて有効濃度に復元させることができる.
3) 規定服用量でも血中有効濃度以下を示すことがあるが, その場合服用量を増加しないまま次の薬物に移行することを避けうる.一方どれが無効薬物であるかを決定して, 他の薬物へ変更する目やすとすることができる.
4) 薬物の半減期を知れば, その服用間隔を適正に定めることができる.
5) 薬物治療中に個々の患者の状態に応じて体液濃度を定期的に測定することが必要であるとともに, 妊娠中の服薬母体での血中濃度の定期的検診が催奇形成を防ぐ意味でも是非必要であることを提称する

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© 日本小児小児神経学会
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