脳と発達
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抗痙攣剤服用中に発症したクル病の3症例
クル病発症の要因とビタミンD投与による血中25-hydroxy cholecalciferol値の変動-
三牧 孝至隅 清臣清野 佳紀岡田 伸太郎藪内 百治
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1977 年 9 巻 4 号 p. 290-297

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抄録

抗痙攣剤服用中に発症したクル病の3症例について, クル病発症の要因と, ビタミンD投与による血中25-hydroxycholecalciferol値の変動を検討した.
症例1は1才7ヵ月の男児で, phenobarbital, nitrazepam, sulthiameを9ヵ月間服用していた.患児の血中25-hydroxycholecalciferol値は著明に低く, 骨レ線上, クル病性変化を認めた.患児はほとんど一日中屋内で過ごすことが多く, 食餌摂取量も少なく, 栄養学的な要因が大きいと考えられた.ビタミンD2 5, 000単位/日を経口投与して, 3ヵ月後にはクル病性骨変化が消失し, 血中25-hydroxycholecalciferol値も, 著明に上昇した.
症例2は5才6ヵ月の女児で, phenobarbital, diphenylhydantoin, pheneturide, acetazolamideを5年以上服用していた.患児の血中25-hydroxycholecalciferol値は著明に低く, 骨レ線上クル病性変化を認めた.そこでビタミンD2 5, 000単位/日経口投与を受けたが, クル病性骨変化の改善を認めず, ビタミンD2を20, 000単位/日に増量してはじめて治療効果がみられ, 血中25-hydcoxycholecalcifecol値も上昇した.しかし症例1, 症例2において, いずれもビタミンD投与を中止して3ヵ月以内に, 血中25-hydroxycholecalciferol値は再び著明に低下した.
症例3は4才8ヵ月の女児で, phenobarbital, diphenylhydantoin, acetazolamideを約4年間服用していた.患児の血中25-hydroxycholecalciferol値は正常下限で, 血清カルシウムも正常であったが, 血清無機燐は著明に低下していた.症例3はビタミンDを投与せず, acetazo-lamideの投与中止のみで, 9週後にはクル病性骨変化の改善を認め, 血清無機燐も正常化した.しかし当初正常下限を示した血中25-hydroxycholecalciferol値は, 8ヵ月後には著明に低下してきている.
これらの3症例において, クル病発症腰因および, ビタミンD投与による治療効果に差違を認める.しかしいずれもphenobarbitalやdiphenylhydantoinなどの抗痙攣剤により, ビタミンDの不活性化が促進される結果, 血中25-hydroxycholecalciferol値が低下し, ビタミンDの必要量が増大していると考えられる.

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© 日本小児小児神経学会
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