2023 年 30 巻 p. 25-36
食物アレルギーの有病率は年々増加しており,現代の日本で生活する我々にとって身近な疾患の一つになっている.食物アレルギー疾患予防については,妊娠期から一部の食品の制限や離乳食開始を遅らせるなどの指導がなされていた.しかし現在の主流な考え方として,出生後早期からアレルゲンとなり得る食物の早期経口摂取開始が重要になっており,食物アレルギー予防に関して対応は大きく変化している.そのような中,2019年に乳幼児健診において指標となる「授乳・離乳の支援ガイド」が改定され,2019年前後に生まれた子どもの両親について食物アレルギーに対する認識と行動を調査するため今回の研究テーマを設定した.
岡山県にある保育園において実施したアンケート調査447名の内,返信のあった181名を対象とした.本研究の結果から,乳幼児の保護者に「授乳・離乳の支援ガイド」の正しい知識は伝わっておらず,実際の行動も変容していないことが明らかとなった.一方,乳幼児の保護者はSNS・ネットから情報収集している割合が高いことも明らかとなった.これらのことから,子どもたちの健やかな成長のために,行政・医療機関・民間が連携して「授乳・離乳の支援ガイド」の正しい情報を妊娠中の食事指導や乳児検診で伝えるとともに,SNS・ネットを活用し拡散することも検討する必要がある.