大阪歴史博物館研究紀要
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島津氏の参勤に対する大坂「船除」
木土 博成
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2015 年 13 巻 p. 0019-0048

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抄録

一七世紀、西国有力大名は参勤・帰国に当たり船で大坂に出入りする際、船手(船奉行)に民間船を除けてもらう特別待遇を受けていた。これを「船除(ふなあらけ)」という。一八世紀初頭には天候不順・大坂での海上混雑などを背景に、多くの西国大名が室津(播磨)~大坂間を海上通航から陸上通行に切り替え、船手の八木勘十郎の代に「船除」はほぼ廃止された。しかし島津氏はそれに危機感を抱き、徳川家康・秀忠との参勤由緒を根拠に、正徳元(一七一一)年に船手に対して再開を願い出た。結果として大坂城代の判断により、船手ではなく大坂町奉行の管轄のもと、島津氏への「船除」は新たに認められる。とはいえ、正徳元年以降も島津氏は主に室津~大坂間を陸上通行したため、このような新たな「船除」は定着しなかった。「船除」再開を願い出た島津氏の力点は実際の通航の利便性というより、既得権益の確認にあったのである。

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