日本温泉気候物理医学会雑誌
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温浴の温度差が高齢男性の動脈スティフネスに及ぼす影響
野上 順子野上 佳恵
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論文ID: 2319

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抄録

  【背景】加齢に伴う動脈の構造や機能の変化は,心血管疾患のリスクを増加させる.これまでの研究で運動中の体温動態が運動後の動脈硬化の指標に影響を及ぼす可能性があることから,体温動態は動脈スティフネスに何らかの影響を及ぼすのではないかと考えられる.しかし,体温上昇と動脈スティフネスとの関係は明らかにされていない.そこで,体温上昇が動脈スティフネスの指標である脈波伝播速度(PWV)に及ぼす影響に着目し,健常高齢男性を対象に受動的な体温上昇を引き起こす温浴が大動脈および下肢動脈PWVに及ぼす影響を検討した.

  【方法】健常高齢男性(8名)を被験者とし,35,38,40°Cの入浴を15分間行った.入浴30分後および60分後に,直腸温(Trec),心拍数(HR),血圧(BP)および頚動脈−大腿PWV(大動脈PWV),大腿−足首PWV(下肢動脈PWV)を測定した.全ての測定は,午前中の同一時間帯に室温26°Cに空調された部屋で行った.

  【結果】Trecは38,40°C入浴後に有意に増加した.HRは40°C温浴後に有意に増加(61.4±2.6beats/min→65.7±2.6beats/min,p<0.0167)したが,入浴後の血圧は変化しなかった.PWVは下肢動脈PWVのみ40°C入浴後に有意な減少 (1,122.3±29.7cm/sec→1,087.0±35.3cm/sec,p<0.0083)が認められた.

  【考察】本研究では,40°C入浴後に下肢動脈PWVが有意に低下したが,35°C,38°C入浴後には有意な変化は認められなかった.根底にあるメカニズムはまだ分かっていないが,40°C入浴により,高齢者の下肢動脈PWVが低下する可能性示された.これらの影響は体温の上昇に依存するため,温浴が脚の動脈スティフネスを低下させる可能性が示された.

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