日本温泉気候物理医学会雑誌
Online ISSN : 1884-3697
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若年健常者男性における温浴を併用した運動療法が血中BDNF濃度に与える影響
大古 拓史梅本 安則田島 文博
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論文ID: 2353

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抄録

  【目的】健常若年男性における40°C頚下浸水と自転車エルゴメーターを用いた15分間の持久運動の併用が,血清BDNFの濃度変化に与える影響を評価することを目的とした.

  【方法】実験は,パラレルデザインで実施した.10名の健常男性を対象とし(年齢23.7±0.8歳),介入群は,40°Cの頚下浸水(head-out water immersion:HOI)と自転車エルゴメーター運動を組み合わせた群とし(40°C HOI-ex),比較対照群は,40°CのHOIのみとした. 30分間の安静後,40°C HOI-exまたは40°C HOIを15分間実施し,30分間の回復を設けた.実験中は,心拍数,血圧,深部温度(食道温)を連続的に測定した.採血は30分間の安静後,実施直後,回復15分後,30分後で実施した.解析項目は,血清BDNF,P-セレクチン,血小板数,ヘモグロビン,ヘマトクリット,血漿コルチゾール,乳酸を測定した.

  【結果】血清BDNF濃度は,40°C HOI-exにおいて安静時と比較し,実施直後,回復15分後に有意な増加が観察された.40°C HOIでは,血清BDNF濃度の変化は観察されなかった.深部温度は,40°C HOI-ex,40°C HOIにおいて安静時と比較し,実施直後,回復15分後,回復30分後に有意に増加し,群間差がみられた.血小板数は,40°C HOIおよび40°C HOI-ex共に変化はなかった.40°C HOI-exのP-セレクチンは,安静時と比較し,実施直後,回復15分後に有意な増加が観察された.40°C HOIでは,P-セレクチンの変化は観察されなかった.

  【考察】40°Cの頸下浸水と自転車エルゴメーター運動の併用は,15分間の短時間で血清BDNF濃度を増加させることができる.本研究における血清BDNF濃度の増加は,P-セレクチンが増加していることから,血小板由来である可能性が示唆される.

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© 2022 日本温泉気候物理医学会
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