論文ID: 2355
42℃の高温培養がヒト臍帯内皮細胞 (HUVEC) の増殖を阻害したことを以前に報告し,抗癌治療などの細胞増殖抑制操作と高温条件の組み合わせが,体細胞の増殖をより効果的に抑制される可能性を示した.そこで,がん治療の前処置として深部体温の上昇によりがん治療の有効性が高まるのではないかという仮説を立てるにいたった. 本報告では,がん細胞(Jurkat 細胞,および SLVL)と対照である正常体細胞としてHUVECsに対して,抗がん操作(X線照射または1-β-D-アラビノフラノシルシトシン[Ara-C]添加)を行い,それによりもたらされる細胞の増殖速度とテロメア長の変化を観察した.細胞増殖抑制効果の程度は,細胞の種類,抗がん剤の処置,および温度条件の組み合わせに依存していた.このことから,癌治療で最適な治療効果を生む深部体温条件は,いくつかの温度条件と抗がん操作の組み合わせの下で生検がん細胞の増殖速度を培養条件下でチェックすることによって事前に検討できる可能性が示唆された.