日本温泉気候物理医学会雑誌
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重症難治性喘息と温泉プールによる水泳訓練
谷崎 勝朗駒越 春樹周藤 真康岡田 千春森永 寛大谷 純木村 郁郎
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1984 年 47 巻 3-4 号 p. 115-122

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抄録

8例の重症難治性喘息 (女性2例, 男性6例, 年齢33~69歳) を対象に, 温泉プールによる水泳訓練を行い, その臨床効果について若干の検討を加えた。対象症例は全例1年間以上にわたり副腎皮質ホルモンによる治療を受けている所謂ステロイド依存性喘息であり, その平均使用期間は5.5年であった。また副腎皮質ホルモンの副作用としては, 糖尿病, 肋骨骨折, 高血圧, 筋萎縮などがみられたが, これらの副作用は副腎皮質ホルモンを5年間以上使用している症例では6例中5例 (88.3%) にみられた。
水泳訓練は三朝分院内の温泉プールで行われたが, 訓練場所は環境の変化による喘息発作の誘発を防ぐため, 室温26℃, 水温30℃の一定の条件に保たれた訓練は1回30分を原則とし週4回行われた。また訓練前, 訓練直後, 30分後に脈拍, 血圧, 呼吸数, 発作の状態などが慎重に観察された。
喘鳴, 呼吸困難発作, 喀痰の閉塞状態などの自他覚症状は, 温泉プールによる水泳訓練開始1ケ月後頃より次第に改善されはじめ, その後数ケ月にわたり明らかな改善傾向が全般的に観察された。また訓練開始1ケ月後頃より, 8例中6例において副腎皮質ホルモンの減量が可能であった。水泳訓練前後の動脈血ガス分析では, PO2の変動はみられなかったが, 訓練後にPCO2の低下が5例中2例にみられ, 水泳訓練による hyperventiration が示唆された。しかし, 水泳訓練による exercise-induced bronchospasm (EIB) または exercise-induced asthma (EIA) の出現は観察されなかった。以上の結果より, 温泉プールによる水泳訓練が, 薬物療法の限界をこえたステロイド依存性重症難治性喘息の治療法として有用であることがある程度示唆された。

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