1994 年 57 巻 2 号 p. 142-150
過去10年間に当院へ入院した気管支喘息329例を対象に, その背景因子の年次推移について温泉療法との関連のもとに検討を加えた。
1. 当院へ入院した気管支喘息症例のうち, 温泉療法を受けた症例の頻度および数は, 最近の5年間では増加する傾向が見られた。
2. ステロイド依存性重症難治性喘息の頻度は過去5年間では減少する傾向が見られたが, しかし, 絶対数はむしろ最近増加の傾向であった。
3. 60歳以上の症例, および40歳以降での発症症例の頻度および数は, 最近5年間では増加の傾向にあった。
4. I a およびII型の臨床病型を呈する症例の頻度は, 過去5年間では減少の傾向にあったが, しかし, 絶対数は最近増加しつつあることが明らかにされた。
5. 温泉療法の臨床効果は, その方法により異なり, その有効率は, 温泉療法A (温泉プール水泳訓練) (1982-1985年) では, 68.2%, 温泉療法B (温泉プール水泳訓練+ヨードゾル吸入) (1986-1989年) では87.5%, 温泉療法C (温泉プール水泳訓練+ヨードゾル吸入+鉱泥湿布療法) (1990-1991年) では94.3%であった。
これらの結果は, ステロイド依存性重症難治性喘息症例, 60歳以上の症例, 40歳以降の発症症例などの, むしろ温泉療法を必要とするような症例が最近増加しつつあることを示しており, また, これらの症例に対しては, 温泉療法Cが最も有用であることを示している。