日本温泉気候物理医学会雑誌
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在宅障害者における温泉の効果
デイサービス・デイケアでの温泉入浴
出口 晃中村 覚浜口 均川村 陽一西元 幸雄谷井 康子出口 克巳
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1996 年 59 巻 2 号 p. 99-104

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抄録

デイサービス・デイケアは, 訪問看護, 訪問リハビリ, 給食サービス, ショートステイなどとともに, 在宅障害者のための重要なサービスである。デイサービスは老人福祉法に基づき, デイケアは老人保健法に基づくとの相違はあるが, ともに在宅障害者に対してサービスを提供することにより, その家族の身体的・精神的な負担の軽減を図ることも目的としている。上記の主旨にそって, 我々の施設群において, デイサービスセンターが開設されたのは1981年であったが, この時は淡水浴であった。温泉を入浴に利用できるようになったのは, 小山田温泉が発掘された1986年で, これが小山田総合医療福祉センターにおける在宅障害者の温泉浴の最初であった。1992年には都市型老人保健施設 (老健) でデイケアを開始後にデイサービス・デイケア利用者数, 温泉入浴者数ともに著明に増加し (Fig. 1), デイサービス・デイケアにおける都市型老健の重要性が示された。その他の施設も合わせると, 現在デイサービスが2施設, デイケアが3施設で行われており, 1日50人近く, 1週間では200人近くの人々が温泉水による入浴サービスを利用している。デイサービス・デイケア利用者に面接法でアンケート調査を行い, 186名 (男女比66:120, 平均年齢76.9歳) の回答を得た。入浴形態をみると, 特殊浴槽入浴者数は15.3~20.0%であり (Fig. 1), デイサービス・デイケアにおける特殊浴槽の重要性が改めて確認された。デイサービス・デイケアの実際の利用回数では圧倒的に週1回が多かったが, 利用希望回数では, 週2回以上が多かった。疼痛改善, 睡眠, 食欲では, 三者ともにデイサービス・デイケア利用後に改善が認められたが, 特に疼痛改善では有意であった (Table 1)。温泉浴前後での疼痛, 睡眠, 食欲の改善の比率はそれぞれ63.3%, 37.1%, 21.4%であった。疼痛, 睡眠, 食欲ともに温泉浴週1回利用者よりも, 週2回以上利用者で改善が高率であった (Table 2)。このことから, 週2回以上の入浴が一般化するように福祉行政への働きかけも必要であると思われる。

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