日本温泉気候物理医学会雑誌
Online ISSN : 1884-3697
Print ISSN : 0029-0343
ISSN-L : 0029-0343
人工炭酸温水濃度と皮膚血流量
前田 真治長澤 弘清水 忍頼住 孝二田中 かつら
著者情報
ジャーナル フリー

2003 年 66 巻 3 号 p. 180-184

詳細
抄録

人工炭酸温水は溶存する二酸化炭素の血管拡張作用が期待できることが知られている。しかし、どの程度の濃度であれば有効に血管拡張を来たすのかは十分検討されていない。そこで、一定温度で濃度設定できる人工炭酸温水を用いて健常成人12名を対象に、その濃度について検討した。
測定方法: 32℃の水道水温水と人工炭酸温水 (三菱レイヨンKK製MRE-SPAで作製) を溶存炭酸濃度計を用い0 (水道水のみ)、100、300、600、800、1000ppmに設定した。入浴は全身浴を行った。測定は、レーザ組織血流計 (アドバンス社ALF21) を大腿内側部に設置し、他に左胸部における表面皮膚体温計、血圧・脈拍の変化を同時に測定した。なお、測定は前値5分間、入浴15分間に1分間隔で行い、前値平均値の差の変化量として求めた。室温は25±2℃に調整した。
その結果、血圧は0~1000ppmまで各濃度間で差がなく、収縮期17.1、拡張期23.9mmHgの低下を認め、水道水温水 (0ppm) と有意差はなかった。しかし、組織血流量の炭酸濃度別の変化は入浴直後から0ppmに比較し1000ppmまで濃度依存性に増加を認めた。
従って、健常人における37℃炭酸温水の効果は、血圧・脈拍は水道水も炭酸温水も同程度低下し差はなく、双方とも血管拡張による血圧低下が過度に低下しないよう調整していると考えられた。しかし、組織血流量は炭酸温水で増加しており、炭酸温水は皮膚表面組織に近い血液循環を増すことで血管抵抗を減少させていると考えられる。従って、炭酸温水は水道水に比べ皮膚表面に近い、組織循環を改善させることが期待できると思われた。加えて、炭酸温水で組織血流量が濃度依存性に増加することは、濃度に比例して組織循環・代謝が改善されるものと示唆された。

著者関連情報
© 日本温泉気候物理医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top