音声研究
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Print ISSN : 1342-8675
研究論文
内言における選択的順応と随伴発射
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2013 年 17 巻 3 号 p. 1-9

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抄録

内言は人の心的世界の中心的課題であるものの研究の俎上にのることは少なかった。そこで本研究では内言と選択的順応の交互作用を調べた。選択的順応とはある音の繰返し提示後にその音の範疇知覚境界が変化する現象である。内言が随伴発射(Corollary Discharge,自分の行動に対する感覚反応を減少させる神経信号)によって構成されるという最近の研究成果に基づき,随伴発射による感覚反応の減少が感覚疲労を防ぎ選択的順応を減少させると仮定して研究を進めた。実験の結果,選択的順応は有意に生起したものの,自発構音運動の効果は有意でなかった。この結果は選択的順応が感覚疲労による現象ではないか,あるいはこれらの過程が異なる神経情報処理レベルで遂行されるか,いずれかを示唆すると考えられる。このような結果は内言と随伴発射の役割が認識され始めた音声科学においても重要である。

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© 2013 日本音声学会
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