音声研究
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特集「日英対照音声学」
音節構造から見た日本語の発話タイミングについて(<特集>日英対照音声学)
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1999 年 3 巻 2 号 p. 29-39

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抄録

本稿では,アコモデーション理論の立場から日本語連続発話における音韻継続時間長の特徴について述べる。アコモデーション理論は,英語の発話タイミングを説明するためのもので,その日本語への適用を試みる。日本語は主にモーラ言語であるが,英語に見られる音節レベルからのタイミング制御の機能も認められ,子音も母音も音節枠内で伸縮しあう。本論文では特殊拍によるタイミングの差を基に,モーラ枠と音節枠との相違を検討した。その結果,両言語ともに音節枠からの影響が見え,日本語の場合,英語に比べ子音の固定性は高く,母音はその子音と調整しながら,音節枠内での継続時間を決定する。つまり発話内のタイミング制御は階層的構造で機能し,高次層では言語情報,発話速度,強調などにより音節枠が決定され,また低次層では調音的(物理的)要因によって音節枠内で音素間の伸縮が行なわれると考えられる。

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© 1999 日本音声学会
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