Organ Biology
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ヒトiPS細胞由来心血管系細胞多層体の紹介と臨床応用への展望
升本 英利湊谷 謙司
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2021 年 28 巻 2 号 p. 121-127

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抄録

心筋再生医療に向けた基礎および臨床研究は社会的ニーズの増大とともに非常な勢いで進歩している. 重症心不全に対する再生医療は, 従来は治療困難であった病態に対する新たな治療の可能性を提示するものである. これまで骨髄由来幹細胞·骨格筋芽細胞などの幹細胞分画を用いた心筋再生に向けた臨床研究が実施されているが, いまだ標準治療には至っていない. ヒトiPS細胞を用いた心臓再生では, 免疫学的および倫理的問題のない心臓構成細胞を多量に得ることにより, 疾患により失われた心臓組織を再生しうる可能性があり, また血管新生などの間接的なパラクライン因子を介した治療効果についても組織幹細胞による治療効果を上回る可能性があると期待される. 本稿では, 筆者らがこれまで開発した細胞シートなどの組織工学的技術を応用したヒトiPS細胞由来心血管系細胞多層体を中心に, 幹細胞による心筋再生医療の現状および今後の展望について概説する.

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© 2021 日本臓器保存生物医学会
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