2021 年 28 巻 2 号 p. 128-135
虚血再灌流傷害は, 血中の凝固系·補体系因子が活性化し, 細胞傷害や血栓症を引き起こすため, 臓器移植や細胞移植において, 長期生着率を決定づける因子の一つとして知られている. 本稿では, 虚血再灌流傷害において, 血管内皮表面の糖鎖などのグリコカリックスが欠損することに注目し, 凝固·補体系の活性化回避のための血管内皮の糖鎖コーティング材料の創製を目的とした. 細胞膜表面を修飾できるポリエチレングリコール結合脂質(PEG脂質)を利用して, 細胞表層にヘパリンを固定化することに成功した. ここでは, 2つの方法について紹介する. この細胞表層のヘパリン化により, ヒト血液中において凝固反応の抑制を実証できたことから, 細胞移植や臓器移植時における虚血再灌流傷害からの細胞保護効果が期待できる.